INTERVIEWインタビュー
A Frame – Shibuya StreetDance Week 2015 (2015/11/23)
アフターインタビュー
3人の演出家の下に集まった90年代生まれの日本のダンサー10名と、同じく90年代生まれの東南アジアのダンサー6名。彼らは『A Frame』という作品制作を通してなにを経験し、それをどう自身の表現に反映しようとしているのか。終演直後の彼らに、クリエイションと本番を振り返りつつ語ってもらいました。
次はコラボレーションとしての密度をさらに高めた作品を作ってみたいですね
演出:Oguri
『A Frame』の演出家として、The90sASIAのユニット構成について教えてください。
国内外のダンスイベントで優勝経験のある日本の90年代生まれのダンサーが集まった、The90sJPNというユニットに、東南アジアから映像審査で選ばれた90年代生まれの6人が加わった16人のグループです。
非常に高い技術を持つダンサーが集まりましたね。
そうなんですよ。だからクリエイションの際には、1人ひとりが持つ卓越したスキルを観客へシンプルに伝えることを意識しました。さらに約1時間の上演中、観客が新鮮に「すごい」と驚き続けられるような演出を心がけました。とくにシーンのつなぎ部分は、そこで観客の意識が途切れないよう、こだわりながら繊細に作っていきました。
このメンバーとのクリエイションを通して感じたことは?
「ダンスをやっている人に悪い人はいない!」と本気で思うくらい、ピュアな人が多いと感じました。それは共に踊ることによって、国境や言葉を越えてわかり合える、1つの証だったのかもしれません。皆、心をオープンにして目指すイメージへと挑戦してくれたので、リハーサルを重ねれば重ねるほど、作品がよくなっていったことがとても印象的でした。とにかく素晴らしい踊りをする人ばかりだったので僕自身、演出しながらワクワクを抑えられなかったです。このクリエイションを通して互いに深く理解し合えた経験は、僕にとっても皆にとっても非常に重要な経験になったと思います。
『A Frame』でのクリエイションを経て、今後に向けて考えていることを教えてください。
『A Frame』はリハーサル期間が短かったこともあり、過去に日本人メンバーが踊った作品や僕らが新しく振付をしたものを、海外勢が吸収して形にしていくというスタイルになりました。その分、意見がぶつかることもなく、いい雰囲気でスムーズにリハーサルを進めることができたのですが、次の機会にはもっと互いに意見を出し合いながら、コラボレーションとしての密度を高めた作品を作ってみたい。それが今後の課題ですね。
私にとって『A Frame』は、ストリートダンスの「自由」に焦点を当てた作品でした
演出:Jillian Meyers
この作品のリハーサルで挑戦したことはなんですか?
5つの文化や言語、3人の演出家、既存のショーや要素を新しいアイディアへと変化させること。明確な挑戦がいくつも存在していましたが、ダンサーたちは自身を巧みにコントロールし、互いのスキルを交換し合って発展させながら、この挑戦を楽しんでいたと思います。
ダンサーたちとのコミュニケーションから感じた、それぞれの個性とは?
色々な方言や言語が交じり合っていましたし、同じ単語を言っていてもみんな違う発音であったりと言語面で多少困難はありましたが、彼らがダンスを通してお互いに学び合い成長していく姿は本当に愛おしく感じられました。彼らが言語の壁を越えて「会話」を交わす姿が、私は本当に好きでした。彼らにとって第1言語はダンスですが、第2言語は文化。ダンスやパフォーマンスを通じて共有する文化もありますが、ステージ以外の空間でもそういうものを共有できたことはとても素晴らしいことです。ここでの経験ではそういう意味で本当に貴重だったと思います。リハーサルでは周りに積極的に働きかける人もいれば、受け手に回る人もいましたが、受け手となることが多い人でも、本番で踊り出すとなにをやり出すのか見当がつかず、周りが驚くようなこともありました。ステージで皆の自然なリアクションを見たり、彼らの個性を知ることができたのは、この作品にとって非常に重要な要素となりました。
3人の演出家で1つのユニットを演出した感想は?
たとえば3人の料理人を一つの台所に入れると大変なことになりますが、とても斬新で美味しい料理が生まれるとも思うのです。このコラボレーションも同様で、大変な部分もありましたが、結果的に素晴らしい表現を生み出すことができたと感じています。Oguriとの長年にわたる友情によりクリエイションを一層楽しめましたし、その過程では彼から学び、助けられた部分も多々ありました。これまで以上に彼を深く知ることができましたし、アイディアを交換し合えたこともいい経験になりました。
最後に、『A Frame』はご自身にとってどんな作品でしたか?
私にとってこの作品は、個性的なダンサーと多彩な見せ方を用いた、ストリートダンスが持つ「自由」に焦点を当てたショーケースだったと言えます。明確なストーリーは必要なく、素晴らしいダンサーたちが持つダンススタイルや文化、能力を意識して創作しました。観客は必ずしも作品のメッセージ性を意識する必要はありませんが、学校やストリートなどの身近な題材と、並外れて素晴らしいダンスが融合する様子を目撃し、幸せを感じていただけたとしたらうれしいですね。
ダンサーたちの表現が僕の想定を超えて、裏切ってくれる瞬間が一番面白かった
演出:スズキ拓朗
今回のクリエイションは、どのように進められたのでしょうか?
まず最初にOguriさんとお会いして話をするところから始まりました。そこで彼が表現したいものを汲み取り、それを1つのストーリーとして、観客が追いやすくするにはどうすればいいかを演劇的な視点から考えていきました。その結果、すべてのシーンに共通するものが「フレーム」であることに行き着き、『A Frame』というタイトルが決まりました。
タイトルが決まった時点で、内容はどの程度見えていたのでしょうか?
Oguriさんの中では構成や曲なども細かく決まっていたのですが、途中からJillianさんが参加したときに「1人ひとりのダンサーを見てからでないと、作品は作れない」と言うのを聞いて「確かにそうだな」と思いました。ですから、その後のリハーサルで生まれたシーンや、ダンサーに任せることで生まれたシーンなどが、最終形には相当含まれることになりました。われわれが最初に想定していた要素の割合は、作品全体の50パーセント以下かもしれません。
リハーサルで生まれたアイディアを導入してみて、やはり人間が頭だけで考えることには限界があると実感しました。そしてダンサーたちの表現が僕の想定を超え、裏切ってくれる瞬間が一番面白かったし、うれしかった。欲を言えばまだまだやってみたいこともありますが、それは是非、次の機会に実現したいと思っています。
ダンスの舞台作品がさらに一般的なものになるためには、なにが必要だと考えていますか?
一般の方たちは『A Frame』を観て、高度なダンス技術だけではなく、たとえば学校などの身近な題材にも興味を覚えたのではないかと思います。だから幅広い人たちに「ストリートダンスは面白い」と感じてもらうには、高度な技術を追求するだけでなく、ダンサーと観客をつなぐテーマや演出についても考えていく必要があると感じました。今回で言えば、舞台でフレームを使うことで美術作家たちにも興味を持ってもらえたかもしれません。
本番の感想と今後の課題を教えてください。
日本のダンサーには、ファンの人たちが大勢いて盛り上がっていましたが、それに対して東南アジアのダンサーたちも「負けないぞ!」とオーラを発しながら舞台に立っていて、彼らのダンスを初めて観る日本の観客もその熱量にすぐ惹き込まれていました。その瞬間を目の当たりにしてすごく感動しましたし、ダンスは国を越えて伝わる表現なんだと確信したし、僕も頑張らなくては、と思いを新たにしました。今回の公演は1日のみではもったいないと思えるものになっただけに、これを是非、次の機会へとつなげたいです。
The90sASIA
枠組みの中でどれだけ自由に踊れるか、そこを考えながらのクリエイション
IBUKI (日本)
演出家の印象は?
Oguriさんは、私たちダンサーの気持ちや踊りを理解した上で演出をしているのが伝わってきました。そしてJillianさんは絶対に相手を否定せず、どんな意見もプラスに捉えてくださるので、プレイヤーとしてモチベーションが上がりました。スズキさんは、フレームを使う案やストーリーのアイディアに沿った演技指導をしていただきましたが、ダンスをやっている自分からは生まれない、自由な発想をお持ちだと思いました。
クリエイションを共にしたダンサーたちとの交流で感じたことは?
普段はなかなか出会えない東南アジアのダンサーとのクリエイションでしたが、ダンスを通じて互いに身体の有り様や表現のニュアンスを伝えることができましたし、なにより言語の壁を越えて、やりたいものを共有するという体験そのものに新鮮な感覚を覚えました。
『A Frame』を経験して、学んだものはなんですか?
私は、今までバトルをメインに踊ってきましたが、バトルに決まりごとはなく、いかに自由に表現するかが重要になります。それに対して『A Frame』では、タイトルの通り、演出家から明確な枠組みが提示され、その枠組みの中でどれだけ自由に踊れるかを考えて取り組んだのですが、とても難しい挑戦でした。でも、OguriさんやJillianさんの振付と構成が入るたびに「これはすごい作品になる!」と確信したし、演出家が入ることの効果を実感しました。
どうすればダンスを舞台作品として観客に届けられるのか、その問いに対する挑戦として
KATSUYA (日本)
演出家の印象は?
ダンサーの登場が、それぞれにふさわしい場面設定になっていて、1人ひとりのダンスやキャラクターを深く理解していると感じました。とくにJillianさんからは、多くの言葉をいただきました。リハーサルでは、細かいタイミングで演技を指導されたので、その点は苦労しました。それは「どうすれば、ダンスを舞台作品として観客に届けられるのか」という挑戦だったと思いますし、そこを演出家のアドバイスを基にして考え続けました。自分は今まで、観客に伝えることを強く意識する機会が少なかっただけに、『A Frame』は表現の見せ方や伝え方を学ぶ、絶好の機会になりました。
『A Frame』に参加した感想は?
初対面のダンサーとどう作品を作っていくのか、不安な部分もありましたが、リハーサルを通してお互いに交流を深めることで、最終的にはThe90sASIAにしかできない表現が生まれたと思います。
本番を終えて、「最高!」の一言ですね。ハードなリハーサルでしたが、気持ちを込めながらやってきたからこそ、観客に伝わるものが生まれたと思います。また、3人の演出家からは、表現に「波」を生む作り方や見せ方を教えていただいたので、今後の活動に生かしたいと思います。
いかに自分が楽しんで踊れるかではなく、観る人がどう感じるかを考える機会を得て
KAZANE (日本)
演出家の印象は?
Oguriさんは柔軟かつ、1人ひとりのダンサーにもリスペクトと興味を持ってくださり、リハーサルでもいろいろと気を配ってくださいました。Jillianさんはいつも笑顔が素敵な方で、常にポジティブにリハーサルを進めてくださいました。そして、スズキさんは説得力のある言葉で、私たちに細かい演出を伝えてくださいました。
クリエイションを共にしたダンサーの印象は?
東南アジアのダンサーは皆、強い個性を持った素晴らしいダンサーたちでした。今まで海外のダンサーに対しては、感覚的な部分を重視する印象があったのですが、『A Frame』で接したダンサーは皆、苦手なジャンルでも完璧に踊れるようになるまで自主練習したり、演出家から言われたことは絶対に守るなど、ストイックな姿勢の持ち主ばかりで、とても刺激を受けました。
『A Frame』の経験から、なにを学びましたか?
自分を含め、ストリートダンサーは「観る人がどう感じるか」よりも、「いかに自分が楽しんで踊れるか」ということを中心に考えがちです。でも、今回は舞台作品ということもあり、ダンサーばかりとは限らない一般の人たちに向けて「どうすれば自分も楽しみながら、舞台作品としてダンスの魅力を伝えられるか」を考える機会になりました。自分たちだけで作品を作るときよりも、演出家が入ることで、演技への挑戦もできたし、自分の表現を客観的に捉え、踊りそのものに集中することができました。この経験を踏まえて、自分たちの作品作りにも新たな視点から取り組めると思います。
演出家の方が加わることで、生まれるものがあることを実感しました
KTR (日本)
クリエイションを共にしたダンサーの印象は?
それぞれ特徴のあるダンサーが集まっていたと思いますが、その中でTE DOUBLE D
Y_TEDDYはとくに個性的で気になる存在でした。また演技ができ、長身を生かしたユニークなダンスを踊るMAMiQにも刺激をもらいました。
今回は、言語や育った国が違う者同士で1つの表現を作る、とても貴重な機会でした。2週間のリハーサルでは大変なこともありましたが、東南アジアのダンサーとお互いのダンス観を伝え合い、作品を作った経験は、自分自身の表現にとっても大きなプラスになりました。またThe90sASIAで作品を作りたいです。
『A Frame』を通じて、学んだことはなんですか?
これまでにもThe90sJPNとして作品を作ってきましたが、個性の強いメンバーが集まっているだけに、どうしても作品として、まとまりきれない部分があることを感じていました。ですが、今回のように、ダンサーとして実力もあり、僕たちの意見も汲み取ってくださる演出家の方が加わることで、1つのまとまりのある作品を作れると実感できました。演出家という存在の大きさを、クリエイションを通じて知ることができたし、今後のThe90sJPNの活動を考える上でも重要な経験になりました。
The90sASIAのメンバーと再びコラボレーションする機会を
KYOKA (日本)
『A Frame』に参加した感想は?
演出家の指示の下で踊るのは、今回が初めての経験でした。今まではダンサーとしての視点から作品を作ってきたのですが、一般の方にも観やすくするために小道具や演技を導入したり、うまく場面をつないでいく手法は新鮮で、とても勉強になりました。
クリエイションを共にしたダンサーの印象は?
TE DOUBLE D Y_TEDDYのダンスには、彼自身の個性が反映されていましたし、オープンマインドに話をしてくれて、一緒にいて楽しかったですね。彼らにとっては慣れない環境の下、しかも限られた時間にも関わらず、振付を覚えるのが早くて驚かされました。
『A Frame』はどんな作品に仕上がったと感じていますか?
ダンサー全員の個性がきちんと見える作品です。観ていて飽きない、何度も観たくなるような作品になったと思います。
『A Frame』を終えて今、どんなことを思い、考えていますか?
本番はとにかく楽しかったです。2週間のリハーサルはきつかったですけど、頑張ってよかったと思える仕上がりになりました。大好きなThe90sASIAのメンバーとは、再びコラボレーションする機会があればいいなと思いますし、海外メンバーの故国を訪れてみたいと思うようになりました。
言語の違いを越えて、身体で理解することの重要性を再認識
Maitinhvi (ベトナム)
クリエイションを共にしたダンサーの印象は?
リハーサルでは、お互いの言葉を理解することの難しさを感じました。ただ同時に、言葉の壁を越えたクリエイションに楽しさを見出したのも事実です。ですから、身体で理解することの重要性を再認識する体験となりました。
『A Frame』の演出の中でも、とくに印象的だったものはありますか?
これまでにも15分程度の長さのショーには出演したことはありますが、それよりも長く、しかもフレームを使った表現にトライするのは初めての経験でした。Oguriさんとスズキさんによる、フレームをいろいろなものに見立てるというアイディアは、作品の世界観を広げるのに効果的だと感じたし、とても印象的でした。
こうしたダンス作品の演出に興味はありますか?
演出家は私の夢の1つでもあります。振付をする上では、新鮮で強力なイメージをダンサーに提示し、彼らの気持ちを盛り上げることが重要だと思いますが、JillianさんとOguriさん、そしてスズキさんはそれを体現していて素晴らしいと感じました。自分も同じように演出をしてみたいです。
『A Frame』を終えて今、どんなことを感じていますか?
2週間のリハーサルを含め、すべてがあっという間に終わってしまった気がして寂しいですね。身体を通じて学んだ作品の作り方、場面に合った演技、日本のダンサーのハイレベルな踊りを、将来の作品作りに生かしたいと思います。
新しい体験ができることを誇らしく思い、リハーサルの間はずっとエキサイトしていました
MAMiQ (インドネシア)
『A Frame』に参加するにあたって、どんな気持ちで臨みましたか?
私にとって『A Frame』は、初めて海外でクリエイションに参加した作品です。だからインドネシアを代表するような気持ちでリハーサルに取り組みました。ここで新しい体験ができることを誇らしく思い、リハーサルの間もうれしさでずっとエキサイトしていましたね。
クリエイションを共にしたダンサーの印象は?
インドネシアのダンサーも日本のダンサーも、テクニックや身体の使い方は同じでも、見え方というかスタイルに違いがあって、その違いがはっきり見えました。また、日本のダンサーは非常にエネルギッシュですね。
『A Frame』の演出の中で、とくに印象的だったことはありますか?
小道具を使う作品に出演するのは初めてだったので、小道具を使うタイミングや、場面転換の際にどう扱えばいいかを習得するのが非常に難しかったです。また、初めて演技をすることになり、最初は戸惑いもありましたが、最終的には周りの助けを借りて、集中して演じることができたと思います。
『A Frame』を終えて今、どんなことを感じていますか?
まず、この作品に参加できたことを、本当にうれしく誇りに思っています。そして今回、自分が経験したことを、インドネシアの若いダンサーたちにシェアしていきたいと思います。
この作品を目標の1つにして、自分も演出に取り組んでみたい
Peach Pauline (マレーシア)
クリエイションを共にしたダンサーの印象は?
日本のダンサーのレベルの高さはマレーシアでもリスペクトされていますが、今回会った人たちはそれに加えて皆、フレンドリーで辛抱強く、やさしかったです。私の質問に対しても皆、丁寧に答えてくれました。
リハーサルで、苦労したことはありましたか?
言葉の違いがあったので、コミュニケーションではボディランゲージを使うことが多かったです。また、普段はやっていないハウスというジャンルに挑戦したことも、私にとって苦労した点の1つでした。
リハーサルや本番を通じて、一番印象に残ったことは何でしたか?
日本のスタッフチームの仕事振りに驚きました。練習スタジオにはステージのサイズがマークされ、衣装やスケジュールも、私たちがクリエイションを進めやすいように手配されているなど、リハーサルの環境が徹底的に整えられていることに感動しました。
『A Frame』の感想と、今後やってみたいと思うことを教えてください。
今までは長くても7分ほどのショーしか作ったことがなかったので、これだけ長い作品をシステマティックに作り上げられるという事実に驚きましたし、出演者としても楽しめました。フレームを使うアイディアも、とてもクリエイティブで素晴らしかったです。この作品で得た知識や経験を、マレーシアで広めたいと思います。また、私は振付もしていますが、『A Frame』に匹敵するものはまだ作れていないで、この作品を目標にして、演出にも取り組んでみたいと思っています。
踊り手として自身の表現を追求しながら、素晴らしい演出をされる3人からの刺激
Ruu (日本)
クリエイションを共にした東南アジアのダンサーとは、どんな話をしましたか?
リハーサルの休憩中に、ダンスをいつどうやって始めたか、といった話をしました。私自身、子どもの頃はインターネットが今ほど普及していなかったこともあり、情報を得るのに苦労しましたが、彼らはさらに大変な状況でダンスを学んでいたことを知り、自分は恵まれていたのだと感じました。
Ruuさんは普段から演出もしていますが、ダンサーとして3人の演出家と向き合ってみていかがでしたか?
演出家の方たちはそれぞれリハーサルの進め方をはじめ、すべてにおいて学ぶことが多かったです。私は将来、演出という面でさらに作品作りに携わっていきたいと思っていますが、まだまだ踊り手としても挑戦をしていきたいです。その点、JillianさんとOguriさんは踊り手としても尊敬している方々ですし、踊り手として自身の表現を追求しながら、素晴らしい演出をされる姿に刺激を受け、自分も2人のようになりたいと思いました。
『A Frame』を終えて今、どんなことを考えていますか?
合宿のようにして2週間、皆でこの作品に挑めたのは大きな経験になりましたし、本番も最後までやりきれたと思います。そして、多くの人たちに助けていただいた分、特別な達成感を感じました。今後はメンバーそれぞれがバトルやコンテストで活動しつつ、こうした舞台作品を定期的に創作することで、多くの人たちに私たちのダンスを知っていただけたらと思います。
皆が100パーセント以上のものを発揮した、素晴らしい作品になったと思います
SAKI (日本)
演出家の印象はいかがでしたか?
Oguriさんは、私たちでは考えつかないような構成を提示してくださいましたし、Jillianさんには、ダンスをやっていない人にも伝わる、わかりやすい表現方法を教えていただきました。そしてスズキさんには、ストリートダンサーにはない視点からの指摘――作品全体の中で自分のダンスをどう捉えるか、ということを教えていただきました。三者三様の視点から見えるものを教えていただくことで、ダンサーとしての視野が広がったと思います。
クリエイションを共にしたダンサーの印象は?
1人ひとり個性にあふれていましたが、中でもMAMiQはダンスをポジティブに考え、長身を生かした自分のダンスを踊っていました。彼は踊っていないときでも、ごく自然にふざけ合えるような気さくな存在だったので、言葉を交わさずともコミュニケーションを取ることができました。
印象に残るエピソードや、終演後に感じたことを教えてください。
私は大分県、KYOKAとyoukiは大阪府からの参加で、リハーサル期間中は東南アジアのダンサーと同じホテルに滞在していたので、私とKYOKAで鍋を作り、ホテル組全員で食べました。本番が近づくにつれて身体的に苦しい部分も出てきましたし、フィジカル面だけを取り上げると、決して100パーセントのコンディションではなかったかもしれません。でも作品としては100パーセント以上のものを発揮した、素晴らしいものになったと思います。
『A Frame』に参加して新たに生まれたダンスへの情熱
Salt (インドネシア)
日本でのリハーサルの感想は?
まず、日本に来てこのクリエイションに携われたことを、とてもうれしく思いました。作品のリハーサルでは多くの新しい体験をし、新しい友達もできて、自分にとって新しい世界が開けたような気がします。ハードなリハーサルに疲れてしまうことがあっても、The90sASIAとしての作品作りは、私にとって非常に有意義な時間となりました。また、同じインドネシア出身のMAMiQ以外のダンサーとはこのプロジェクトで初めて顔を合わせたのですが、2週間の濃密なリハーサルを共にしたことで、今では昔からの仲間のような関係になっています。
リハーサルの中で、難しいと感じたことはありましたか?
インドネシアでも小道具を使って踊ったことはありますが、フレームを使うのは初めてだったので難しかったです。でも、フレームの存在を踏まえながら表現することができるようになると、発展性のある面白いアイディアだと感じるようになりました。
『A Frame』は、ご自身にとってどんな作品になったと思いますか?
非常にハードでしたが、表現者として、とても満足できる作品になったと感じています。また『A Frame』に参加し、自分の中にダンスへの情熱が新たに生まれてきたという意味でも、自分にとってかけがえのない大切な作品になりました。
演出を受ける経験から感じた、自分たちの表現に新たな可能性
TAISUKE (日本)
東南アジアのダンサーとコミュニケーションする上で、意識した点は?
言語の壁をいかになくすか、ということです。海外でその土地の人とコミュニケーションするとき、言葉で自分の意見を伝えられないと、互いに交流しようという気持ちをシャットアウトしてしまうことがあります。でも今回は、言葉の能力が不十分であってもどんどん話しかけることで、言語の壁を越えて「あなたとコミュニケーションを取りたい」という意思を示すように心がけました。
演出家が入ってのクリエイションに、感じたことは?
正直なところ、最初は「ダンサーである自分たちの発想より、演出家に合わせなければいけないのか?」という戸惑いはありましたが、自分達が舞台をメインにやっている訳ではないので、振付・演出家の方々に全てを託し、全力でそれに応えたいと思いました。そして演出を通じて自分たちの表現に新たな可能性を感じることができました。
これまでの作品制作とは、どんな違いを感じましたか?
今までThe90sJPNで作ってきた作品は、ダンスだけで見せるショーケースの延長線上にあるものでしたし、創作に際しての考え方もそうでした。しかし、今回初めて演出や脚本に基づく演技を体験して、表現における効果や使い方を知ることができました。また、場面のつなぎ方や小道具を使うアイディアなど、今までの自分たちにはなかったものを実践し、学ぶことができたので、今後の活動にフィードバックしていきたいと思っています。
挑戦することが好きなので、リハーサルではずっとワクワクしていました
TE DOUBLE D Y_TEDDY (マレーシア)
クリエイションの感想は?
クリエイションでは、動きの早さとシャープさ、カウントやタイミングを大切にすること、お互いのことを話してコミュニケーションを取ることを意識しました。そして彼らも、こちらから投げかけたものすべてに応えてくれましたし、その対応からは愛が感じられました。
以前は日本のダンサーに対して、ダンスの基礎はあるがストーリーやアイディアはイマイチ、という印象がありましたが、今回の演出アイディアは大変素晴らしく、衝撃を受けました。逆にマレーシアのダンサーは、素晴らしいストーリーやアイディアを発想できる人はいるのですが、なぜか基礎がそこに追いついていないことが多いのです。
日本のダンサーは、大きな動きはもちろん、細かい動きまでクリアなところが刺激的で、時間を正確に守り、挨拶をきちんとして、気持ちよく創作に取り組める環境を作ろうとします。その姿勢にプロ意識を感じました。どちらもマレーシアに帰ったら周りに伝えたいと思います。
『A Frame』を通して大変だったことはありましたか?
なにより挑戦することが好きなので、リハーサルではずっとワクワクしていました。疲れなど感じませんし、傷ついている暇もありません。次になにが学べるのかをずっと楽しみにしていました。
今後もThe90sASIAとして、日本や海外を回って公演をしてみたい
youki (日本)
クリエイションを共にしたダンサーの印象は?
皆、素晴らしいダンサーばかりでした。僕は、一緒に踊るメンバーが外国人であろうと日本人であろうと、あまり気にしたことはないです。一緒に踊ることで、最終的にお互いの意思は通じ合うという実感がありますから。
『A Frame』に参加した感想は?
自分たちでは思いつかないストーリーや演技を取り入れたクリエイションに参加して、とてもいい経験になったと思っています。Oguriさん、Jillianさん、そしてスズキさんの言葉や演出に触発される部分は、非常に大きかったです。普段はやらない演技をやるのは大変でしたが、個人的には頑張れたのではないかな、と思っています。
本番は、やりきったという感覚が強いです。もちろんリハーサルでも皆、真剣にクリエイションに取り組んでいましたが、本番ではそれとは別次元の「本気」を出して、表現できたと思います。これで終わりにするのではなく、今後もThe90sASIAとして日本全国や海外を回って公演をしてみたいです。そして個人としては、もっと観客を魅せられるよう自分自身を磨きたいと思っています。
今度は僕らが海外に出て、現地のダンサーたちと創作がしたい
YU-YA (日本)
バトルやコンテストと『A Frame』の間には、どんな違いがありましたか?
バトルやコンテストでは本番で直感的な動きを楽しむため、ソロの内容を決めずに臨むこともあります。でも『A Frame』では1から10まで、すべてが決まっていました。その違いは非常に大きかったです。
『A Frame』の構成・演出には、どんなことを感じましたか?
普段の自分だったら、セレクトしないような楽曲が使われていたこともあり、合同リハーサル前の個別リハーサルが思うように進まず、最初は不安でした。でも、合同リハーサルでは演出家の方々を通じて作品の全体像をつかむことができたので、そこからは安心してリハーサルに臨めました。
リハーサルで驚いたことや、大変だったことはありましたか?
本番直前に「リハーサルでこんなに細かいところまで詰めるのか!」と驚きました。作品が仕上がる頃には疲労も溜まって全力での表現が難しいときもあり、それを演出家に指摘されて苛立ってしまったこともありました。でも、実際に細かいところを詰めることで作品がよくなっていくのを感じ、苛立ちは演出家に対するリスペクトへと変わっていきました。
『A Frame』を終えて今、どんなことを考えていますか?
もともとダンスは国籍を越えて交流できる表現ですが、今まで一緒に作品を作る機会がなかっただけに、面白い体験でした。今度は僕らが海外に出て、現地のダンサーと創作したいですね。『A Frame』でも日本の観客が非常に沸いていたので、海外ではさらに盛り上がるのではないかと思います。
『A Frame』で得た、たくさんの愛や喜びを持ち帰りたいと思います
Zyro Santos (フィリピン)
Zyroさんの所属するPHILIPPINE ALLSTARSは活動が盛んで、2015年10月の『ダンス・ダンス・アジア 東京公演』にも出演しました。『A Frame』を通じて、日本とフィリピンのダンスに違いを感じることはありましたか?
日本はダンスのレベルが高いと感じました。フィリピンのダンスシーンでは、知識はあるのですが、実際の技術面では日本ほどには発展していないように感じます。これだけ技術レベルの高いダンサーが揃っている日本は素晴らしいですね。
舞台制作の面では、細かい部分に違いがあるのかもしれませんが、ダンサー自身がダンス表現に対して抱く思いには、大きな違いはないように感じます。僕らは愛を込めて作品を作っていますし、他のメンバーたちもダンスに対して強い愛を持っていますから。ただ日本のダンサーたちは、ダンスへの愛に加えて高い技術を持っているので、強いて言うならそれが違いかもしれません。
このプロジェクトにどんな気持ちを抱いていますか?
こういった舞台公演として構成されたダンス作品に参加したのは初めての経験でしたし、この場に参加できる喜びを感じながら、クリエイションに取り組むことができました。『A Frame』で得た、たくさんの愛や喜びをフィリピンに持ち帰りたいと思います。