INTERVIEWインタビュー
スペシャルインタビューシリーズ
TALK LIKE DANCING! ―オドルヲカタル!―
なぜ彼らは踊り始めたのか?そして、ダンスは彼らの人生をどう変えたのか?
アジアのダンスシーン最前線で活躍する人々へのインタビューシリーズ「TALK LIKE DANCING!―オドルヲカタル!―」。
第1回の演出振付家MIKIKO氏、第2回のUSA氏に続いて、第3回は特別編として、
ダンス・ダンス・アジア東京公演で演出・振付を務めるハムディ・ファバス氏と、
ブレイクダンスのスペシャリストで、ワールドワイドに活動するダンサーKATSU1氏が対談形式で語り合う。
「重要なのは、ダンスの本質を活かすこと」
ハムディ・ファバス氏とKATSU1氏が、ストリートダンスについて語り合う特別編。
その後編では、ストリートキッズ支援へのKATSU1氏の思いや、人との出会い、
新たな層にアピールすることがシーンに与える影響について熱のこもったトークが展開。
さらに2人の視点から見たダンス・ダンス・アジアというプロジェクトへの感想を語り合ってもらった。
その後編では、ストリートキッズ支援へのKATSU1氏の思いや、人との出会い、
新たな層にアピールすることがシーンに与える影響について熱のこもったトークが展開。
さらに2人の視点から見たダンス・ダンス・アジアというプロジェクトへの感想を語り合ってもらった。
対談の前編では、KATSU1さんが会社を立ち上げた背景や、ユースオリンピックについての考えを話していただきました。それらの活動を通じてシーンを盛り上げていこうとするモチベーションは、どこにあるのでしょうか。
KATSU1 いいシーンを作りたいと思うのは、自分が年齢を重ねてからも、そこにいたいから(笑)。そして、フィリピンやベトナムのストリートキッズを支援するプロジェクトに参加して思ったのは、彼らはよくも悪くも今いる世界しか知らないということでした。それがスタンダードだと思って生活しているわけですよね(編注・KATSU1氏のフィリピンでの、ダンスを通じたストリートキッズ支援「カパヤパンブロジェクト」の様子は、以下の動画でも紹介されている。
https://www.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=1udbAUdb0GE&app=desktop)
だから、日本と比べて勝手にかわいそうだと思っていたけれども、もしかすると僕たちよりも心の面では豊かなのかもしれない。だから「助けてあげよう」という上から目線ではなく、一緒に楽しむために支援をする、というふうに考えています。
https://www.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=1udbAUdb0GE&app=desktop)
だから、日本と比べて勝手にかわいそうだと思っていたけれども、もしかすると僕たちよりも心の面では豊かなのかもしれない。だから「助けてあげよう」という上から目線ではなく、一緒に楽しむために支援をする、というふうに考えています。
フィリピンでは、実際にストリートキッズとガチのバトルをしたんです。そのバトルの後で彼とハグしたら知らぬ間に涙があふれてきて……。10歳の少年だったんですけど、そこで彼の10年間と僕の36年間が繋がるような感覚がありました。
普段、10歳の子供とケンカすることなんてないじゃないですか(笑)。年齢も性別も肌の色も、踊っている瞬間にはまったく関係ない。ダンスは改めてすごいと思いました。だから支援プロジェクトを続ける理由も、ダンスが好きなのはもちろんですが、そこを通じて人と出会えるからなんですよね。
普段、10歳の子供とケンカすることなんてないじゃないですか(笑)。年齢も性別も肌の色も、踊っている瞬間にはまったく関係ない。ダンスは改めてすごいと思いました。だから支援プロジェクトを続ける理由も、ダンスが好きなのはもちろんですが、そこを通じて人と出会えるからなんですよね。
ハムディ とても共感できるお話ですね。僕がインドネシアでストリートダンスについてのウェブサイトを立ち上げたのも、10代より上の世代にもストリートダンスを紹介したかったから。それがコミュニティにもいい影響を及ぼすと考えたからなんです。
KATSU1さんの活動を通じて小さい子供たちが、ストリートの文化自体を経験するわけではないかもしれないけど、動きやバトルなど、ストリートダンスの一部を経験することができる。それが世界的に大きなムーブメントに育っていくと思います。
KATSU1さんの活動を通じて小さい子供たちが、ストリートの文化自体を経験するわけではないかもしれないけど、動きやバトルなど、ストリートダンスの一部を経験することができる。それが世界的に大きなムーブメントに育っていくと思います。
KATSU1 だから大事なのは世代や国を越えていく、ということですよね。ダンス・ダンス・アジアの前回公演も観させていただきましたが、やはり国境をまたいで一つのものを作るところが、純粋にいいと思いました。そしてストリートダンスを使うことで、言葉に頼らず表現できるところも素晴らしい。
こうしたプロジェクトが普及していって、たとえば日本のダンサーが「次はベトナムで踊ってきます」ということが普通になれば、次世代の若い子たちも「自分もああいうふうに活動したい」と思うようになるでしょう。それは他の東南アジアのダンサーたちもそうだと思う。
前編でお話ししたユースオリンピックではないですけど、そういう場をたくさん設けていくことが夢を与えることに繋がりますよね。「ダンスを通じていろいろな国で活躍したい。だから練習するんだ!」というように。またこれも前編でお話ししましたが、そういう機会が増えることが、ダンスを追求することと生活していくということを両立させる、落としどころの一つにもなる。きっかけや目標を作ることは、ジャンルを振興するためにも重要だと思います。
こうしたプロジェクトが普及していって、たとえば日本のダンサーが「次はベトナムで踊ってきます」ということが普通になれば、次世代の若い子たちも「自分もああいうふうに活動したい」と思うようになるでしょう。それは他の東南アジアのダンサーたちもそうだと思う。
前編でお話ししたユースオリンピックではないですけど、そういう場をたくさん設けていくことが夢を与えることに繋がりますよね。「ダンスを通じていろいろな国で活躍したい。だから練習するんだ!」というように。またこれも前編でお話ししましたが、そういう機会が増えることが、ダンスを追求することと生活していくということを両立させる、落としどころの一つにもなる。きっかけや目標を作ることは、ジャンルを振興するためにも重要だと思います。
ハムディ 僕自身、ダンス・ダンス・アジアに参加できることを、とても光栄に感じています。東京公演に参加できることも、自分にとってとても大きな機会ですね。公演に訪れる方々には、自分の表現を通じてインスピレーションを与えたいと思っていますし、インドネシアのダンサーには、「あなたたちにも東京でダンスを創作したり、東南アジア各国のダンサーたちと活動する機会を得られる可能性がある」と伝えたい。そもそもKATSU1さんと最初に「SCAPE RF Jam」で出会ったとき、将来こうした場で、こういうふうに対談するとは想像できませんでしたから。
KATSU1 それは僕もそうですよ!
ハムディ こうして思いがけない機会をいただけるのはとても不思議ですし、面白いですね。またダンス・ダンス・アジアを通じて、黄帝心仙人さんを始め有名なクリエイターとお会いできることもうれしいですね。彼らと舞台をシェアしたり、同じスペースで時間を過ごしたりできるわけですから。こうしてKATSU1さんとアイデアを交換できることも楽しいですし、今後のプロジェクトの進展にも期待しています。
KATSU1 ストリートダンスで舞台を作る試みは、以前はそれほど盛んではなかったと思います。でも今はそういう作品が増えてきているので、「ストリートダンスが、社会的にも認知されるようになってきたんだな」と感じます。
ストリートダンスをやっている人間から見ると、ダンス・ダンス・アジアは一般の方がストリートダンスに触れる機会になり得る公演だと思いますし、この公演を観て「ストリートダンスをやりたい」と思う子供も増えるのでは。もちろん、
ストリートダンスをやっている人間から見ると、ダンス・ダンス・アジアは一般の方がストリートダンスに触れる機会になり得る公演だと思いますし、この公演を観て「ストリートダンスをやりたい」と思う子供も増えるのでは。もちろん、
ハムディがどんな作品を作ってくれるのかも楽しみにしています。どういうふうに作るの? ヘッドスピンだけをやってそれで終わりとか?(笑)。
ハムディ 20分間ずっとね(笑)。クリエイターとしてこのプロジェクトに参加して感じたのは、パフォーミング・アーツは面白いということ。どんなことでも試すことができますし……、それこそヘッドスピンも(笑)。それはパフォーミング・アーツが、正解のない世界だからだと思います。
作品に対して賛否があるのは当然ですし、ストリートダンスをパフォーミング・アーツとして捉えるのに反対する人がいることも知っています。でも、反対されているからといってやらない手はない。僕自身、このプロジェクトはストリートダンスのコミュニティにとって、とても意味があると思っていますから。実際にヨーロッパにはBboy Stormを始め、コンテンポラリーの世界でも活躍するストリートダンサーがいる。だから僕も舞台表現の世界に、ストリートの要素を持ち込みたいと思っています。
この先もダンス・ダンス・アジアが続いていけば、これはストリートダンスシーンにとって、重要なプロジェクトの一つになり得るでしょう。もちろん今後もバトルなどの場でも、ダンサーが活躍していくことができればと思っています。一番重要なのは、どんな場所であってもダンスの本質を活かすということに尽きます。
僕もダンスを通じて神からの祝福を受け、ダンスそのものにも助けられてきました。得たものがあまりにも大きい分、簡単にできることではありませんが、今後はできるだけ、ダンスに対して恩返しをしていきたいと思っています。
作品に対して賛否があるのは当然ですし、ストリートダンスをパフォーミング・アーツとして捉えるのに反対する人がいることも知っています。でも、反対されているからといってやらない手はない。僕自身、このプロジェクトはストリートダンスのコミュニティにとって、とても意味があると思っていますから。実際にヨーロッパにはBboy Stormを始め、コンテンポラリーの世界でも活躍するストリートダンサーがいる。だから僕も舞台表現の世界に、ストリートの要素を持ち込みたいと思っています。
この先もダンス・ダンス・アジアが続いていけば、これはストリートダンスシーンにとって、重要なプロジェクトの一つになり得るでしょう。もちろん今後もバトルなどの場でも、ダンサーが活躍していくことができればと思っています。一番重要なのは、どんな場所であってもダンスの本質を活かすということに尽きます。
僕もダンスを通じて神からの祝福を受け、ダンスそのものにも助けられてきました。得たものがあまりにも大きい分、簡単にできることではありませんが、今後はできるだけ、ダンスに対して恩返しをしていきたいと思っています。
【KATSU1】
BBOYとして「FREESTYLE SESSION USA」優勝、日本人初となる「R16」世界大会のショー部門とバトル部門をダブル優勝などの実績を有し、SOLO BATTLE「Red Bull BC One」世界大会 in ニューヨークや「BATTLE OF THE YEAR」世界大会 inフランス で、現役のBBOYとしては日本人初のゲストジャッジを務める。2010年に活動拠点を日本からオーストラリアへ移し、2013年にオーストラリア永住権を取得。同年にストリートダンスの文化、ストリート文化の発展を目指し「株式会社IAM」を設立。
【Hamdi Fabas ハムディ・ファバス】
ダンサー、振付家。オーストラリアで育つ。インドネシアを代表するダンス・アイコン。4年6ヶ月の間にインドネシアで大人気を博した2つのTV番組で審査員を務める。1997年よりアーバン・ダンス文化とエンタテインメント業界のサポートを開始。2003年にインドネシア初のダンスコミュニティ、Bboy Indonesia(Bboyindo)を設立。2011年にはFabas ART Dance Productionsを、「P.H.A.T crew」のSabina Jacinthaとともに立ち上げる。また、自身のクリエイティブな活動と並行して、MintZ Nge-DanZe GokilZの審査員を務めるなど、インドネシアのダンスの発展と青少年の育成にも力を注いでいる。