INTERVIEWインタビュー

演出振付家 MIKIKO
スペシャルインタビューシリーズ

TALK LIKE DANCING! ―オドルヲカタル!―

なぜ彼らは踊り始めたのか? そして、ダンスは彼らの人生をどう変えたのか?
ダンス・ダンス・アジア公式サイトが、アジアのダンスシーン最前線で活躍する人々を直撃。
スペシャルインタビューシリーズ「TALK LIKE DANCING!―オドルヲカタル!―」。

MIKIKO 振付家・ダンサー 顔写真
演出振付家  MIKIKO【前編】

「そのときの自分から生まれる、最新の表現を」

シリーズ第1回では、Perfumeや「恋ダンス」を始めとする振付や、リオ・オリンピックフラッグハンドオーバーセレモニーの閉会式の演出など、演出振付家として国内外を問わず活躍するMIKIKO氏を3回にわたってフィーチャー。前編ではダンスとの出会い、そして演出家を志すまでを語ってもらった。

MIKIKO 振付家・ダンサー 顔写真

MIKIKOさんとダンスとの最初の出会いは?

ダンスを始めたのは高校2年生のときです。中学の3年間はバトン部だったんですが、高校に入って「かっこいいダンスがやりたいな」と思って。それで先生を探したら、モダンバレエとヒップホップの先生が同時に見つかったんですね。それこそバレエを始めるには遅い年齢だったんですが、何が自分に合っているかわからなかったので、両方一緒のタイミングで習い始めました。子供の頃から母にはいろいろなものを観せてもらってはいたけれど、特にダンサーや振付家になりたいと思っていたわけではなかったですね。
当時、私の通っていた広島のスタジオには、女性らしい動きを教えられる先生や、ジャズダンスを教えられる先生がいなかったんです。ありがたいことに、原田薫さん(編注:日本のダンスシーンを代表するジャズダンサー)を始めとするトップの先生方が、ワークショップで教えに来てくださっていましたが、その機会は月に1回くらいしかなくて。
それで卵が先か鶏が先か……ではないですけど、「習いながら教えることで勉強していきなさい」とスタジオのオーナーに言われて、仲間と教えるのと習うのを同時にやるようになったのが19、20歳の頃。ダンスを始めてまだ1、2年でした。
レッスンで人に教えるためには振りを創らないといけないので、そのときから「ヒップホップとバレエを習った自分は、両方の要素を入れながら、この私の日本人体形にはどんな振付が合うのか?」と悩みに悩んで、今に至るスタイルを確立した感じです。

今とはダンスを巡る状況も違う中、仲間と模索していかれたんですか。

そうです。情報がない中で、先輩がNYから仕入れてきた貴重な見本のビデオをいかに研究して深めるか、という時代でした。今思うとすごいいい時代だったと思います。当時はまだ、YouTubeで動画がすぐチェックできるネット環境などは普及していませんでしたが、情報に飢えているがゆえに、一つのものに集中して、それを掘り下げていくことをみんなで熱くやっていました。
東京で気になる公演があるときはお金を貯めて、そこを目がけてみんなで観に行きました。「東京に行くなら、レッスンを絶対3回は受けて帰ろう!」と決めて出かけて。広島に戻ったら、受けたレッスンの内容を1ヵ月丸々練習してまた東京に……という感じ。一つのものを大事に大事に訓練して、レッスンの内容も今のように動画で繰り返し観られるわけではないから、感動とともにそれを目に焼き付けていました。いいものを吸収するためには、自分の記憶と身体に保存するしかなかったんです。
今はレッスンで動画を撮ったり、動画をアップするのが当たり前ですけど、仮にそれが可能だったとしても、当時の先生はそれをやったら怒っただろうと思います。その場でいかに先生の真似をして踊ることができるか、集中力が何より重要でした。
MIKIKO 振付家・ダンサー 顔写真

それだけの集中力を発揮するのには、ダンスへの情熱が不可欠ですが、それはどこから生まれていたのでしょう。

やればやるほど答えが返ってくるし、1日でも怠けたらダメになる世界だからでしょうね。常に自問自答しながら、自分と向き合うわけじゃないですか。だからすべてが自分にかかっている。しかも、声や言葉を使わずに思いを表現しなければいけないから身体能力だけではなく、センス、人間性まで一気に磨かないといけない。その難しさと面白さにハマっていったのだと思います。
ただ、自分がダンスに向いているとは思っていませんでした。どちらかというとインドア派の文系だったので(笑)。球技も苦手だし運動は好きではないんだけど、「音楽に合わせて自分を表現することは好きだな」と思っていたんです。

「ダンスはやりたいけど、自分は身体能力がないから……」と躊躇している人が聞いたら、「えっ!」と思うようなお話ですね。

長年の経験で言うと、どんな人でもある程度までは絶対に上手くなります。そこからセンスだったりスタイルだったり……ということになりますが、それぞれのスタイルの特徴を生かし切れれば、自分が短所だと思っていた部分も踊ると長所に変わり、その人にしかない個性にできる。伸びていく楽しさを知れば知るほど、のめり込んでいけるジャンルだと思います。

先ほどの話だと、目指す存在があってというより、まずはダンスを始めて自分のスタイルを探していかれたということで。ただ、ダンスは欧米から生まれたものでもあるわけで、欧米のスタイルと距離を感じたことはありましたか。

そうですね……、でも、日本のミュージックシーンが、いろいろな要素をミックスしながら日本らしいものになったのと同様に、ダンスも欧米のスタイルを1回身体に入れ、それをどう自分から発信するか、ということだと思います。欧米人の持つリズム感や音に対するセンスは学ぶべきだけど、そこから自分の中で学んだものをどう昇華させて発信するか。
ニューヨークに行くまでは、私もフォロワーだったというか……。たとえば、かっこいいミュージックビデオを観ると「今はこういうスタイルが流行っているんだ。どういうふうにやってるんだろう?」と思って、まずは真似してみる感じでしたから。そもそも、欧米そのままのダンスは、私の体型には体形的には向いてないとは薄々思っていたんですけど、ニューヨークに行くことで図らずも、「日本人の私」にとってのダンスを改めて省みることができたんです。
それからは「日本でどういうダンスが踊られていたら面白いかな?」と考えるようになったというか。インタビューなどの際に「アメリカ的なダンスに違和感があった」とお話しすることもあるんですけど、それも「違和感がある!」と強く思うというより、「欧米的なダンスは オリジネーターにお任せして、自分は自分のオリジナルで勝負したい」と思ったんです。
MIKIKO 振付家・ダンサー 顔写真

自分の表現に オリジナリティーを感じたきっかけはあったんですか。

特にはなかったですね。日本の音楽に合う自分の身体に馴染む動きを追求していたら、それがいつの間にかオリジナルなものとして認知されるようになっていた、という感じ。オリジナルを創りたくて創ったというより、自然現象のような感じで生まれたというか。

ダンス・ダンス・アジアでは、参加アーティストが自分らしさ、アジアらしさを考える機会もあるのですが、MIKIKOさんの場合は目の前にある音楽に対して、自然に持っているものを出すところからスタイルを構築されていった?

そうですね。

やはり、頭でっかちになりすぎるのはよくない?

ということと、たぶん「らしさ」みたいなものを自ら語るのはよくないのでは、と思います。私も依頼された際に「MIKIKOさんっぽい振付でお願いします」と言われることもありますけど、そう言われて「これがMIKIKOっぽいスタイルです」と提示することほど恥ずかしいことはないと思う。そのときの自分から生まれる最新の表現を、人に「らしい」と感じてもらう。そういう姿勢でいたいです。

【MIKIKO】

演出振付家。ダンスカンパニー「ELEVENPLAY」主宰。Perfume,BABYMETALの振付・ライブ演出をはじめ、様々なMV・CM・舞台などの振付を行う。
メディアアートのシーンでも国内外で評価が高く、新しいテクノロジーをエンターテインメントに昇華させる技術を持つ演出家として、ジャンルを超えた様々なクリエーターとのコラボレーションを行っている。

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