DANCE DANCE ASIA – バンコク・タイ (2015/03)
アフターインタビュー
梅棒 / リアルタイムに感じた「伝わっている!」
J-POPに乗せ、日本人に親しみやすい友情や恋愛をテーマにストーリーを演じる梅棒作品に、バンコクの観客からはどのような反応があったのでしょうか?梅棒を主宰する伊藤今人に、バンコク公演での手ごたえや、今後の海外活動への意欲を語ってもらいました。
バンコクツアーに参加してみていかがでしたか?
伊藤今人 : 今回のDANCE DANCE ASIAのプロジェクトは、アジアのいろんなところで日本のダンスを見てもらうことで、現地の人が刺激を受けつつ、逆に自分たちも刺激を受けて、交流を図っていく企画だと思っています。
僕らのパフォーマンスが海外でどこまで通じるかというのは、前々から気になっていたところでした。使っている曲がJ-POPで、さらに日本人になじみのある設定やストーリーで作品作りをしているので、日本の文化や曲になじみのない外国の方を相手にどこまで伝わるのかを試す、いい機会だと思いました。僕らも成長したいという気持ちで、喜んで参加しました。
観客の反応は?
伊藤今人 :
リアクションは日本人よりストレートでしたね。楽しいことが起きたら手を挙げて盛り上がってくれるし、驚きがあったら声を上げてくれました。
伏線や人間関係のぶつかり合いなど、ストーリー上の意味を伝えたいシーンでも、すべてにリアクションが飛んできたので、瞬間ごとに「おお! 今、伝わっているな」と感じながら踊ることができました。
海外の人にもわかりやすいようにと、なるべくシンプルなストーリー設定の作品を用意したこともあって、伝えたいと思っていたところではリアクションをもらえました。
ワークショップでは何を一番伝えたかったですか?
伊藤今人 :
僕は日本で俳優もやっているので、俳優のワークショップも受けたことがあります。だから、いかにダンスを踊りながら、その時の感情を大事にするかということを伝えたいと思いました。
振付を踊って、そこに後から感情を乗せるという通常のプロセスとは逆で、今こういう感情で相手のことを思っているから手が出る振付になるし、悩んでいるから頭を抱える振付になる。
普通のダンスのワークショップでは「振付を一生懸命踊らなきゃ」、「言われた通りに丁寧に踊らなきゃ」ということに一生懸命になってしまいます。しかしそうではなくて、振付を忘れてもいいから、感情だけは繋げてほしい。振付が飛んでも感情が繋がっていれば、お客さんは舞台上のダンサーを見ていることができると思うのです。
そういうところを大事にしてほしくて、ワークショップをやりました。
皆さん、アグレッシブに楽しみながら受けてくれました。新しいことに前のめりで挑戦してくれているのを感じたので、とても嬉しかったです。
今の日本のダンスシーンについてどのように思いますか?
伊藤今人 : ダンサーはレッスンを教えるだけで食べることができたり、生徒を囲って自分のナンバー(ダンスの作品)の振付をしていれば、ずっとそれで生活ができたり、平日の夜にイベントがいろんなところで開催されたりと、一見安定しているように見える、おかしな時代になってきています。
僕は俳優なので、ダンスシーンよりも厳しい俳優の世界を知っています。朝から夜まで稽古して、夜から朝までバイトして、寝ないで稽古。だけど、肝心の演劇の舞台活動では、一銭も入ってこない生活をしている人がたくさんいます。そりゃ辞めていくよね、と思います。
日本は舞台や芸術に助成金が出にくいです。しかし、助成金がないと、表現活動だけでは生活できません。本物のパフォーマーで本当にそれに向き合っている人は、それで報われる世界に変えていきたいです。それに挑戦できる段階まで、僕らは今、足をかけている気がします。
今後の展望を教えて下さい。
伊藤今人 : 今、僕らは公演活動をやっています。1時間半くらいの公演を年2回程やっていますが、それを続けていくのはなかなか難しいのが現状です。大きく言えば金銭的なところで、日本で舞台づくりを続けていくのは困難な作業です。梅棒はそれを常にやっていける団体になりたいです。
ただ、いいものを作っているだけだと、活動の場を広げられないというのが日本です。それどころか活動も辞めていってしまう人がほとんどです。それをどうにか変えたいですね。
これは僕らだけでできることではありません。本物のパフォーマンスを作っては磨き、先輩方や若い子たちなど、いろんな人に協力してもらえる形を作りながら、多くの人に見せ続けられる団体にしたいです。
今回のツアーを契機に、東南アジアの人から「一緒に作品を創りませんか?」というオファーがあったらどうしますか?
伊藤今人 :
いいですね! そういうムーブメントが起きたら最高ですよね。いい化学反応を見せられる方が日本に来てくれるのもいいですね。他のアジアの人ともっと交流したいです。
僕らのスタイルは、日本ならではだと思います。パフォーマンスを見たお客さんや通訳の方からも、マンガやアニメのようだったと言ってもらえて嬉しかったです。まったく違う世界の人の目にどういう風に映るのか、今回やってさらに気になるようになりました。他の国にも行きたいです。
Posted – 2016.08.26
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